第2話「二つの遺言事件」
第2回:調査編「遺言の有効性」
机の上に並べられた二通の遺言書。 古びた便せんに父の字で書かれた自筆証書遺言と、公証役場で作られた公正証書遺言。 依頼人の女性は、不安そうに二つを見比べていた。
🐾 まねまる:
「ふむふむ…。自筆の方は文字が力強いけど、ちょっと日付の書き方があやしいにゃ。」
💡 みどり:
「そうですね。自筆証書遺言の場合、全文・日付・氏名を自書し、押印することが法律で決められています。 この日付、途中で書き直したように見えますね。訂正印がないので、この部分は無効とされる可能性があります。」
女性は目を見開いた。「えっ…そんな細かいところで?」
🐾 まねまる:
「遺言書は形式を守らないと、せっかくの思いも“効力なし”になってしまうんだにゃ。」
💡 みどり:
「一方で、公正証書遺言は公証人と証人立会いのもと作られているため、形式的には原則として完全に有効です。」
🐾 まねまる:
「つまり…現時点で信頼できるのは公正証書遺言のほうにゃ!」
女性はほっとしたように息をついたが、同時に複雑な表情を浮かべた。 「でも…父が自分で残そうとした遺言も、無視してしまうのは心苦しいです。」
💡 みどり:
「お気持ちは分かります。実は二つの遺言が出てきた場合、原則として後に作られた遺言が優先されます。 ただし、それが有効な形式を満たしている場合に限られます。」
🐾 まねまる:
「じゃあ、最後に書かれた方が無効だったら…?もっと前の日付の遺言が生きることもあるにゃ!」
依頼人は小さくうなずき、二つの遺言書を見つめ直した。 父が二度も遺言を残したことには、きっと強い思いがあるに違いない――。
事件はさらに深まりを見せていった。
👉 次回へ続く🐾
🐾 登場人物紹介
- まねまる:探偵帽と虫眼鏡がトレードマークの猫。事件の核心を嗅ぎ分ける名探偵。
- みどり先生:行政書士。遺言の有効性を冷静に見極める法の専門家。
- 依頼人:二つの遺言書を見つけた女性。父の思いをどう受け止めるか、揺れている。
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