第2話「二つの遺言事件」
第1回:導入編「二つの遺言書」
「先生、ちょっとご相談したいことがあるんです…。」
相談室に入ってきたのは、三十代半ばの女性。落ち着いた雰囲気をまといながらも、手に持った封筒をぎゅっと握りしめ、どこか不安げな表情を浮かべていた。
「父が先月亡くなりまして、遺品を整理していたら…二つの遺言書が出てきたんです。」
差し出された封筒には、古びた便せんに父の直筆で書かれた自筆証書遺言と、公証役場で作られた公正証書遺言の正本が入っていた。
「どっちを信じればいいのか分からなくて…。兄と意見が食い違ってしまっているんです。」
その声には、家族の絆が揺らぐ不安がにじんでいた。
🐾 まねまる:
「ほほう、それは“二つの遺言事件”にゃ!」
机の端で丸まっていた猫のまねまるが、ピンと耳を立てて飛び起きた。 いつの間にか探偵帽をかぶり、くるりとしっぽを振って虫眼鏡を構える。
💡 みどり:
「確かに、遺言が二つ出てきた場合は、どちらが有効なのかをきちんと確認する必要があります。形式や日付によって、結果が大きく変わるんですよ。」
🐾 まねまる:
「遺言書は“最後に作られたものが有効”という原則があるけど、まずは形式を満たしているかどうかも確認する必要があるにゃ!」
女性は小さくうなずいた。「父は几帳面な人だったけど、体調を崩してからは書きかけのメモも多くて…。本当にどこまで有効なのか不安なんです。」
💡 みどり:
「分かりました。では順番に確認していきましょう。まずは、この自筆証書遺言の方から見ていきますね。」
机の上に広げられた二通の遺言書。 一つは年月を経たインクの跡が、もう一つは公証役場の証明印が鮮やかに残っている。
「父が最後に残した言葉は、どちらなのか…」
事件は静かに幕を開けた。
👉 次回へ続く🐾
🐾 登場人物紹介
- まねまる:探偵帽と虫眼鏡がトレードマークの猫。事件の本質をひらめく名探偵。
- みどり先生:行政書士。冷静に法的観点から解決策を導く、まねまるの相棒。
- 依頼人:父の死後、二つの遺言書を見つけた女性。兄との意見対立に悩む。
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