余白を織る ー 日々の片隅から ー

第2回 返事はいらない

5年前、前の職場を辞めたとき、私には仲良くしていた後輩が二人いた。
一回り年下だったけれど、気を遣わずに話せて、仕事中も笑い合える大切な存在。
あなたもその一人だった。

退職後もときどきランチに行き、ささやかな贈り物をやりとりしながら、私たちのつながりは細くても続いていた。

でも、ある日突然、あなたが遠い場所へ引っ越したと聞いた。
直接ではなく、人づてに。
驚いて連絡をしたけれど、返事はなく、やがてその道さえ閉ざされていると知った。

どうしてなのかはわからない。
けれど、あなたなりに新しい道を選び、過去を手放してでも前に進もうとしたのだろう。
私は寂しい。けれど、恨みはない。

もしこの文章が、いつかあなたの目にふれるなら、ただ一つだけ伝えたい。
返事はいらない。
ただ、どうか元気でいて。
あなたが笑って過ごせているのなら、それで十分だから。

そして、もし今、あなたが傷ついていてどうしようもない中にいるのなら——
それでもいつか前を向けたときに、また会えたらいいなと思う。

— 奈津


🐾まねまるひと言

奈津の言葉は、返事を求めない手紙。
でも静かに誰かの心に寄り添う力を持つんだにゃ。


✎ シリーズについて

このエッセイは、行政書士である私自身を投影した「奈津」という架空の人物が語り手となり、
日々の小さな出来事や心の揺れを綴っています。
フィクションとして、けれど私の分身として――「余白を織る」シリーズをお届けします。

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